平野啓一郎「ストレス・リレー」を読む。ストレスを消滅させる力について
11月26日にNHKで平野啓一郎さんの原作のドラマがあったらしい。それは京都の放映で見れていない。
が、その原作の短編が公開されていて、一気に読んでしまった。
ある人が持ったストレスを、そのストレスとは関係ない他人の言動にキレるとかして表現してしまって、次々に人にストレスが伝染していくというお話。
ストレスの伝染(リレー)については、「ある、ある、こんなこと!」って感じに丁寧に描写されている。
ポイントはアンカーなのである。リレーされたストレスを誰かに伝染させずに、その人で終息させた人。ルーシーという名前の人。
<ちょっとネタバレ>
その人は伝わったストレスをストレスとして受け取ったのだけど、そのストレスを消滅させてしまう。
消滅。蒸発。希釈。
そんな言葉の現象が起こる。
この人がどうやってストレスを「消滅」させたのかが一つの大きなポイント。
この人は、たまたま川に行って、そこに座って、自然の中に身をゆだね、鳥が餌を取るのを驚きを持って見たり、ウクレレの練習をしたりして、過ごす。
この中で、ストレスは「消滅」している。
平野氏が文章の中で解説のように書いている文「つまり、彼女は、文学の対象であり、小説の主人公の資格を立派に備えているのである。」、2度出てくるこの文がストレスを消滅させる要素の鍵であると思っている。
平野氏が言わんとしたことを正しくとらえているとは思わないが、私は次のように考えた。
自然や芸術の美しさ・おもしろさといったパワーにより、日常の平面から少し浮遊することで、日常のストレスが「薄まり」、世界は少し穏やかになる。
自然の美しさや芸術のパワーといって、大仰なものとは限らない。
昔読んだテニス漫画「エースをねらえ!」で次のようなシーンがある。
主人公が大事な試合の最中うまくいっていない。その時、信頼する愛する人と食べた焼き芋のことを思い出す。
「おいしかった、あの焼き芋」
その記憶を思い出したことで、気分が変わり、プレイが良くなっていく。
それを読んだとき、わたし、まだ10代前半。
強く心に残った。
自分がプレッシャーやストレスを感じるとき、自分の「焼き芋」に思いを馳せようと思った。
「焼き芋」は「ストレス・リレー」でのルーシーの自然やウクレレの音である。
わたしは、人にストレスを伝染させないよう努めている。というか、自分のストレスを薄めたり、消したりしようと、かなり意識している。
それは、ある時はマッサージだったり、旅行だったりしてきたのだが、大きな意味でのアートの力が大きいと思う。
美しい、不思議、おもしろい、気持ちいい、そんな感情に短い時間でも身をゆだねることで、日常の平面から浮遊する。日常を少し俯瞰的に見ることができる。日常を少し忘れる。
ルーシーが自然やウクレレの音に思いを寄せることができる人であるということが、彼女がアートの力の中で生きているということであり、「彼女は、文学の対象であり、小説の主人公の資格を立派に備えている」ということなのではないかと思ったのであります。
そして、ルーシーは特別な人ではなく、アートの力に思いを寄せることは誰にでも備わった能力で、その能力を少し意識して生活することが、世界のストレス・リレーを減らしていくことになるのではないか?
こんなことを考えました。
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