【ご報告】大野和士指揮 宮崎国際音楽祭のヴェルディのレクイエム
<総括>
満足しました。
入りと終わりの静かな音
「怒りの日」の怒涛の大音響 大太鼓鳴る鳴る!
音の繊細さ、膨らみ、やっぱ、生ベルディのレクイエム、すごかったです。
<合唱>
新国立劇場の合唱団は、ステージを3方向取り囲むように2階席に陣取りました。
最初のコーラスが、右のバス・正面右のテノール・正面左のアルト・左のソプラノと音が拡がった時点でクラクラです。
当然のことながら、音は澄んでいて、音程も超きれい。
一般的なオペラに比べて合唱の役割が大きく、聞きごたえがありました。
<歌手 ソリスト>
中村恵理さん
声量・ベルカント的な歌い方、期待以上!
彼女の歌っている姿を見ると、こっちもつられて脱力して口を開けて聞いてしまう。
口や喉、体の中に余計な力が入っていなくて、出てくる声は本当に「歌手」という高度な技を感じます。
ピアニッシモは薄い綿のようなまろやかさ。
最後らへんで、オーケストラも合唱もフォルティシモの中から繰り出される、突きつける大音量の美声!!
池田香織さん
わたし、オペラ界にはとんと疎くて、この人のこと知らなかったのです。
よかったです。メゾらしくふくよかで温かい、それで芯のある声でした。
聖母マリア様の声はかくありなんという感じ。ソプラノとの2重唱では、歌い方も声質も全く違うんだけど、それぞれがしっかりとそれぞれの歌を歌うことで音楽になってる。
ワーグナーを得意とするらしい。
この人の歌はどんなものも聞いてみたいと思いました。
私的には、知ることができてよかった大発見の歌手です。
宮里直樹さん
迫力ありました。音量もすごいし、テノールの艶がありました。この人が歌っていると、レクイエムと言っても、やっぱヴェルディだな、オペラの主人公みたいでした。
妻屋秀和さん
バスは音的にものすごく大きくはならないので、目立つ感じにはならなかった。バスの宿命でしょうか?しかし安定した力強い歌でした。
どの方もよく歌い、よく聴かせていただきました。
<オーケストラ>
まず、チェロから始まって、ヴァイオリンが入った瞬間、その美しさで脳の中がキラリと光りました。
音がきれいて、よくコントロールされていました。
ピアニッシモに透明感がありました。
ちなみにコンサートマスターは元ウィーンフィルのコンサートマスターのライナー・キュッヒルさんでした。
宮崎国際音楽祭のオペラはここ数年ライナー・キュッヒルさんがコンマスをしています。
宮崎国際音楽祭のオーケストラは、毎年この音楽祭のために結成されるオーケストラで、メンバーは多少入れ替わりがあるものの、20年弾いています。
当初、メンバーが豪華。ヴァイオリンはほとんどがコンサートマスターかソリスト。ほかの楽器も首席やソリストばかり、という紹介をされていました。
しかし、実は最初10年ほどはわたしはいい演奏とは思っていなかったのです。
オーケストラとしての表現がないというか・・・
まあ、それを、一人一人の自己表現が同時進行されるという稀有な演奏ということで、それはそれでおもしろい、と捉えていました。
ところが、ここ数年、オーケストラとしての一体感が強くなってきて、音のカラーもその場面場面で同じ色になってきたように感じます。
その一体感がこの曲でより一層感じられました。
ダイナミックで、かつ繊細。
いい演奏でした。
なんで、変わってきたのかわかりません。
指揮者の力なのか・・・
それと面白く思ったのが、メンバーの位置です。
20年続いていると、それそれ20歳年を取っていて、かなり高齢になった方、最初若かった方は中年になって・・・
弦はトップの位置など座る場所が変わっています。
ベテランの方が後ろに下がり、このメンバーの中で比較的若い方がトップに入っていました。
私はヴィオラの川崎雅夫さんが大好きで、音楽祭が始まった時からの参加。アンサンブルではアイザック・スターンと一緒に弾いていましたが、すばらしい音と表現でした。
今回は鈴木康浩さんがトップに座り、川崎さんは後ろでした。そういえば数年前も川崎さんはトップにいなかったような・・・後ろで支えておられます。
今年の音楽祭の他公演の写真を見ると、これまでコンマスだった徳永二男さんもずっと後ろに下がっていたようです。
このオーケストラのメンバーは、おそらく音楽監督の徳永二男さんが決めているのだろうと思っていますが、少しずつ将来を見据えて、世代交代をはかっているように見えます。
<最後に>
生ヴェルディのレクイエムはもう聞く機会はないかもしれません。その、もしかして最初で最後をこのすごい演奏で聞けてよかったです。
残念だったのは、若干席が空いていたことです。前に座っていたので、振り返ると、コロナの席数配慮以上に空いていたように思います。
この豪華な構成で一番高くて1万円だったのです。1万円でこの体験ができたのです。
ちょっともったいなかったような・・・
都市に住んでおられる方々には、来年以降、コンサートと観光で、宮崎国際音楽祭の時期に宮崎に来られることをぜひお勧めします。
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