岬洋介シリーズ「いつまでもショパン」再読 ショパンコンクールのメルヘン
初期の岬洋介シリーズである「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」「いつまでもショパン」は、けっこう昔に読んだ。
クラシックとミステリー、それも現代日本のお話ということで、興味を持った。
ピアノ曲の構成やテクニックの解説が延々と語られる。
ミステリーとして好きとかいうと、微妙なのだが、ついつい読んでしまった。
「さよならラフマニノフ」ではストラディバリウスのチェロが盗まれたことの事件解決ということもあって、読んでしまった。
ストーリーはよくできているが、小説としてはかなりリアルに欠ける。カラーのはっきりした登場人物が多いし、展開もそこそこ意表を突くぞという意気込みが強く感じられる。
それぞれの話には主人公がいるが、事件を解決するのはピアニストである岬洋介。
理詰めで事実を暴くが、わざと存在感薄くしているような不思議なキャラクターだった。
でも、それから追い続けていくほどの魅力は感じず、その後は読んでいなかった。
最近、なにかの情報でシリーズに3作追加されているのがわかった。
高校生の岬洋介、司法修習生の彼、司法修習生時代の仲間を助ける彼。
タイトルでは、「どこかでベートーヴェン」「もういちどベートーヴェン」「合唱 岬洋介の帰還」である。
岬洋介という人が前の3冊でかなり謎のキャラクターだったので、どういう人なんだろうと後半3冊を読んだ。
今、オーケストラでベートーヴェンをやっていることもあった。
<ここからキャラクターのネタバレあり>
岬洋介は高校生の頃からすでに人の心を捉えるものすごい演奏をしていたのだが、突発性難聴となり、ピアニストの道をあきらめる。
彼の父は検察官で、彼のピアノのことは全く理解を示さない。そして、なぜか彼も司法試験を受け、首席で司法修習所に入り、司法の道に進もうとしている。
が、ベートーヴェン好きの司法修習所の仲間の一人に、改めて自分がピアノを弾くことが何よりもしたいことだと気付かされ、ピアノを再開し、国内の大きなコンクールで1位となり、司法修習所を退所する。
それから、シリーズ3作品の話があって、最後の「合唱 岬洋介の帰還」に続いている。
「合唱 岬洋介の帰還」では、ショパンコンクールのファイナリストとなり、ファイナルのステージで奇跡の5分と呼ばれる演奏を行い、それから世界を股にかける人気ピアニストになっている。
単純に岬洋介という人に興味のあった私は目的を達成。「こんなキャラクターだったのね・・・」
それから、彼のショパンコンクールの演奏について記憶があやふやになっていたので、「いつまでもショパン」を再読した。
ショパンコンクールは、先日開催されたばかりで、映像は演奏や入賞者の発表などちらっとは見た。
それで、前に読んだときより、具体的なシーンをイメージできた。
この本では、いつも以上にピアノ曲と弾き方の説明が多く、それもすべてショパン。
実はそれについては読んでもピンとこない。
ピアノ曲をあまり知らないし、どんな演奏がすごいというのもわからない。
コンサートでピアノを聞く機会があるが、うまいかどうかはプロレベルだとまったくよくわからなくて、あるのは好きかどうかだけである。
数回辻井伸行さんのピアノを聞いたことがあるが、彼の音色、流れるような演奏はすごくいいと思った。
ショパンコンクールで2位となった反田恭平さんは宮崎で何度かコンサートをしているが、残念ながら聞き逃している。
そういえばこの本に辻井伸行さんがモデルのようなピアニストが出てくる。その人は2位となる。
ほかの登場するピアニストにモデルがいるかどうかは不明。
この本では、ファイナルの演奏中に岬洋介は突発性難聴の症状が出て、演奏を中断する。その後ノクターンを弾くのだが(弾く理由はあることはある。読んでください。)、その演奏がいろいろあってアフガニスタンのタリバンの攻撃を一時的に止め、その間に人質が救出されるというものすごい展開がある。
人の心を揺さぶったノクターンということ。
最初にも申し上げましたが、リアルさに欠けるお話でありますが、だからこそメルヘンとして、楽しい気持ちになりました。
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